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Sachsenwald
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ファミリー名:Sachsenwald
種類:市販書体
ファンダリー:Monotype
リリース年:2017
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Sachsenwaldは2017年にリリースされたベルトルド・ヴォルペ・コレクションという復刻書体群の一つです。ブラックレター書体(ドイツではfraktur、フラクトゥールと呼ばれる)であり、元々はヴォルペによってデザインされ、Monotypeから1936年に金属活字書体としてリリースされました。

Sachsenwaldはもともとドイツの出版社であるUlstein(ウルシュタイン)からMonotypeを通して発注された書体で、開発中はBismarck Schrift(ビスマルク書体)という名前でした。もちろん30年代後半にドイツの会社がイギリスの会社に仕事を依頼するという状況は長く続くわけもなく、ウルシュタインはプロジェクトから撤退しました。書体の開発はSachsenwalt(ザクセンヴァルト)に改名された上で続行しました。新しい書体名はザクセンの森という意味で、元の書体名の由来であったオットー・フォン・ビスマルクが1871年に恩賜褒賞として与えられた森林地帯のことであり、いかにもドイツ愛国的であった「ビスマルク」から和らげるための改名だったのでしょう。書体はリリースされたものの、悪化する英独の国際状況のなか、英国でのブラックレターの需要はほとんどありませんでした。1967年までには3件しか売上がなかったとされ、その年には正式にカタログから姿を消します(67〜68年にはMonotypeの在庫スペースの管理のため書体カタログの整理が行われました。より好評で大きなファミリー、特にMonotype Universにスペースを譲るためです)。

これら直線的で装飾の少ないブラックレター体はGebrochene Grotesk(ゲブロッホネ・グロテスク)と呼ばれますが、この書体が人気だった時代とナチス・ドイツが台頭してきた時代が重複するため、Schaftstiefelgrotesk(軍隊靴グロテスク)と呼ばれることもあります※。Sachsenwaldはその中でも曲線が多く、ステムの先端にあるダイヤモンドと呼ばれる菱形も一つ一つ形が少しずつ違い、温かみのある方で、軍隊の規律を想起させるようなデザインではありません。Monotypeは英国市場で受け入れられやすくするため、ドイツ国外では読みにくいと思われる文字 H I X x に異体字を用意しました。これはデジタル復刻版でも収録されています。ブラックレターではスクリプト体と同様にオールキャップ組みは伝統的にはお勧めされませんが、Sachsenwaldの大文字には装飾が少なく、オールキャップでも十分使えます。

歴史的な理由からこれまで市場全体としてゲブロッホネ・グロテスクのデジタル商用書体は作られず、Sachsenwaldも眠ったままでした。ヴォルペ書体復刻プロジェクトでもSachsenwaldに関しては社内から不安の声がありましたが、最終的にはリリースされました。この復刻版では元の書体の温かみを残すため、ダイヤモンドはコピーペーストせずに毎回ゼロから描いています。

※ドイツでは伝統的にブラックレター体を本文用書体として使っておりナチスも例外ではありませんでしたが、あるとき突然「ブラックレターはユダヤの書体である」として公文書の書体での使用を停止、ローマン体に切り替えました。その本当の理由は記録されていませんが、もっとも納得のいくのは占領した近隣の国ではブラックレターが読まれず、円滑な連絡が難しくなり、ローマン体への切り替えに際して愛国的な理由をでっち上げたというものです。