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Omagari

Neue Plak
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ファミリー名:Neue Plak
種類:市販書体
ファンダリー:Linotype (Monotype)
リリース年:2018
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Neue PlakはFuturaのデザイナーとして有名なPaul Renner(ポール・レナー)の作であるPlakの復刻書体で、当時の同僚のLinda Hintz(リンダ・ヒンツ)との共作です。

本文用書体であったFuturaと違い、レナーの続編となったPlakは見出し用書体でした。一方でFuturaと同様、そのデザインは機械的なものでした。太さのバリエーションはなく、字幅の違う3つのウエイトが用意されていました。それぞれのウエイトには大文字Rや小文字sなど細部に個性的な違いがありますが、特にユニークなのは最も字幅の広いウエイトの小文字rでしょう。また特筆すべき点は大文字のLやTなどの字幅のアグレッシブな詰めで、見出し組みでのスペーシングの問題を軽減するための処置でしょう。木活字版でならば組版者が活字を削ることでカーニングは可能でしたが、やはり始めからカーニングせずに済むに越したことはありません。

ドイツに住んだことはないのでPlakがどのように使われていたのか肌感覚としてはありませんが、タブロイド紙のBildが60年台後半ぐらいまでよく使われていたことは知っています。このことにはリンダは顔をしかめるようですが、書体の使い方自体は効果的で気に入っています。

Plakは私がメカニカルグロテスクと呼んでいるジャンルの先駆者で、その代表例であるDIN 1451を3年先行しています(ジオメトリックはaやgなどに特定の字型を選択することが期待されますし基本的にボウルが丸いカテゴリーです。DINやPlakも伝統的に同じ枠に入れられていますが、これらが同居するカテゴリーが存在していいのか疑問なのでメカニカルと呼んでいます)。DINも同様にウエイトは1つで字幅のバリエーションが3つありました。現代でもその遺産は健在で、Commercial TypeのGraphikやAppleのSan FranciscoはPlakの後継的なデザインと言えます。しかしPlakそのものは進化しないまま時代の流れから大きく遅れを取っており、その魅力とは裏腹に現代のグラフィックデザインのニーズにはもはや応えられないでいたように感じました。リンダも同感だったようで、協力して復刻プロジェクトに取り組むことになりました。

私たちのデザインの役割は完全に二分されており、両方がデザインディレクターでした。ちょうど映画『パシフィック・リム』の共同パイロットのような感じです。あるときはマスター別に仕事を切り分けたり、また別のときには文字セット別であったりと、綺麗に仕事分担の分かれ目はなく、流動的にお互い同じ分量をこなしていました。普通ならカーニングはとても個性が出る部分であり、共同でやったときの個人差を避けるために一人のみで担当することが多いですが、Neue Plakでは2人で行いました。まず2人が別々に全く同じマスターをカーニングしてみて、差が出た部分を徹底的に話し合って思考回路を統一させてから実作業を始めたからです。

このようにして作られたNeue Plakは、元のPlakに忠実ながら現代のデザイン業務にもしっかり使える新しい書体に生まれ変わりました。12マスターから作られた48ウエイトは、オリジナルの各ウエイトにあった異体字をすべて収録しています。ファミリーを通して同じ顔はしていないという少し一筋縄ではいかない書体ではありますが、そこが魅力だと思っています。整っている書体をお求めなら、すでに山ほどありますしね。

このファミリーには本文用となるNeue Plak Textもあり、こちらは6ウエイトとそれに随伴するイタリックの12ウエイト構成となっています。