Toshi
Omagari

Metro Nova
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ファミリー名:Metro Nova
種類:市販書体
ファンダリー:Linotype (Monotype)
リリース年:2013
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Metro Novaはアメリカ人のデザイナーであるWilliam Addison Dwiggins(ウィリアム・アディソン・ドゥイギンズ)がデザインし、Linotypeが1929年にリリースしたMetro書体の復刻版です。私がMonotypeから出した初めての書体でもあります。

ここではMetro Novaについて紹介していますが、以前に書いたブログ記事にもっと詳しく書いております。
Metro Nova前編
Metro Nova後編

元のMetroについて始めましょう。ドゥイギンズはこの当時すでにカリグラファー、タイポグラファー、イラストレーター、グラフィックデザイナーとして成功していました。彼は1928年に出版した著書『Layout in advertising(広告のレイアウト)』に、Linotypeは本文組版に使えるようなサンセリフ書体がないことを批判しました。このときFuturaやGill Sansは数年前に出たばかりという状況で、そのような書体をLinotypeに求めていたようです。当時のLinotypeのHarry Gage(ハリー・ゲイジ)は彼を社に招き、ドゥイギンズの欲しい書体を作るよう依頼しました。これがドゥイギンズの書体デザイナーとしてのデビュー作となるMetroで、彼はすでに49歳でした(いつから始めても遅くないですよ!)。書体は4ウエイト構成で、ひとつのウエイトの字幅設定が別のウエイトでも使いまわされるというデュプレックス構成がなされており、ThinとMediumがその1ペア、LightとBlackがもう1つのペアとなっています。ウエイト名はファミリー名をくっつけた珍しい構成となっており、Metrothin、Metrolite、Metromedium、Metroblackと呼ばれていました。

最初にリリースされたバージョンはGill Sansなどに代表されるヒューマニスティックサンセリフで、二階建てのaやg、くるっと巻き込んだeが特徴的でした。のちにFuturaにデザインを似せるために幾つかの異体字が追加されました(A G J M N V W a e g v w 0123456789 & ,‘’ $ £など)。この異体字セットはMetro No. 2と呼ばれ、いつからかこちらがMetroの基本セットとなり、いわゆるNo. 1は世間からも忘れられる存在となりました。デジタル時代になってもMetroはNo. 2と呼ばれ続けていましたが、最初のデザインはまだ不在でした。

2011年後半、私はレディング大学を卒業してMonotypeでインターンを始めていました。このとき『Linotype: the film』という映画を制作中であったDoug Wilson(ダグ・ウィルソン)監督に、映画でメインの書体として使うためMetroblack初期デザインのデジタル化を依頼されました。初めて見たMetro No. 1に感銘を受けて、すぐに制作を始めました。完成した映画版Metroほぼは金属活字版の完全再現で、カーニングも入っていません。このプロジェクトが元となり、市販用のMetroの復刻版であるNovaが作られることとなりました。

Metro Novaは元のデザインの設計意図をなるべく忠実に再現したものですが、原図に忠実なわけではありません。昔のデザインは魅力的に見えても、現代の水準からすると見直すべき部分は様々あります。Metroの場合は字幅の縛りのせいでThinとLiteが割と広めで、MediumとBlackがコンデンス気味でした。これはデザイナーの意図というより当時の技術的制限で、学術的に興味深くてもデザインとしては不要です。Metro Novaの字幅は現在の水準どおり、ウエイトの増加に比例して広くなっていきます。次はむしろ最大のセールスポイントである、初期デザインの復活です。その他、より多くのウエイト、スモールキャップ、オールドスタイル数字、コンデンス版など、21世紀の書体ファミリーらしく追加要素が盛り沢山です。

No. 2の異体字はOpenTypeのスタイルセットから呼び出せます。セット1は全てをNo. 2に切り替え、2〜10は各文字を個別に切り替えます。例えばセット6は小文字eの切り替えなので、より普通のサンセリフらしくなるでしょう。逆にイタリックではaとg(セット5と7)をオンにすることで、より伝統的なイタリックらしく見せることもできます。