Toshi
Omagari

Comic Code
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ファミリー名:Comic Code, Comic Code Ligatures
分類:市販書体
ファンダリー:Tabular Type Foundry
リリース年:2019
購入リンク:I Love Typography (両ファミリー)

Comic Codeはカジュアル書体の中でも最も悪名高い、かつ最も人気な書体であろうComic Sansにインスパイアされて作った等幅書体です。その名前の通りコーディング、プログラミングに特化しています。プログラミングはタイポグラフィの中でも他の文字組みと比べて「書く」作業の割合が非常に多い部類であり、その身体感覚は手書きにも近いものがあります。このため、Comic Sansの親しみやすさと低解像度での判読性の高さはプログラミングでも生かせると考えました。Comic Sansは嫌われることも非常に多い書体ですが、Comic Codeはその長所を素直に認め、“code like nobody’s watching”(誰にも見られてないつもりでコードを書こう)というスローガンを体現した書体となっています。

Comic Sansはもちろん批判の多い書体であり、私からするとアウトライン品質とスペーシングが気になります。Comic Codeでは元のデザインの特長を残しつつ、この点の改善を試みています。Comic Sansの子供っぽいデザインも好きでないという人もいるでしょうが、私にとってこれは長所です。プロならタイポグラフィの品質は訴えていきたいところでしょうが、いつ何時も高品質である必要はないでしょう。Comic Sansで組まれたテキストは上から人を見下すような表情にならず、一方でその判別性の高い文字でテキストの内容を確実に伝えてくれます。従来のかっちりとした等幅書体で書かれた怖い見た目になりがちですが、Comic Codeではその柔らかい見た目でコーディング初心者やディスレクシアを持った読者の方にも受け入れてもらえると願っています。ところでComic Sansは欧米ではディスレクシア読者に人気のチョイスですが、Comic Codeも同様の好評をいただいております。

この書体には標準版のComic Codeとリガチャー版のComic Code Ligaturesの2種類のファミリーがあります。リガチャー版にはプログラミングに特化した合字があり、例えば!=と打つと見た目が≠に変わります(字幅は2文字分)。通常版にも同じリガチャーは収録されていますが任意設定となっており、通常時は出てきません。プログラミング用リガチャーの効能は言語によって違い、Haskellなどでは大きく見た目が変わります。リガチャーに対する批判は主に2点あると思いますが、1つは元のテキストの内容から見た目が変わるため、慣れていないと分からないこと。2つ目はダッシュなどが繋がってしまうと文字数をカウントしづらいことです。前者については好みですが、後者に関しては書体デザインの方である程度解決できます。Comic Codeではリガチャーの接続を緩めにすることで、そこそこ繋がったような見た目にしつつ各文字の切れ目を明確化し、カウントしやすくしています。

Comic CodeはComic Sansからインスパイアされているだけで独自にデザインされており、著作権的にも商標的にも独立しています。念のため。