Toshi
Omagari

Belinsky
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ファミリー名:Belinsky, Belinsky Text
分類:市販書体
ファンダリー:Tabular Type Foundry
リリース年:2019
購入リンク:I Love Typography (両ファミリー)

Belinskyはロンドンやニューヨークなどのビルに見られるレタリングや書体に触発されており、それを等幅でやってみたくなって作りました。例えばgやイタリックのeにはKabelからの引用が見られると思いますし、ß(エスツェット)はベルリンの路上標識からの引用です。Qのデザインは特殊ですが、これは「1941」というカプコンのゲームに登場するピクセル書体から来ています。ピクセル解像度が低いと他人には全く違うように見えることはありますが、これも本来の意図としてはClarendonのQのような波型だったのだと思われるところを、私があえて違う風に解釈した図形がこのQなわけです。

私はもちろん等幅書体は好きなのですが、だからと言って等幅につきもののスペーシングの問題を手放しに歓迎しているわけでもなく、やっぱり解決策がないかどうかは考えています。等幅書体の大前提として字幅を調整したりカーニングを施したりするのは絶対にNGですが、文字の形を変えることでなら対処はできます。この書体ではi l f tにセリフやアームが伸びた異体字を追加し、隙間が広すぎる際にそれを埋める処理を仕込んでいます。もともとはCowhandで初めて試したアプローチでした。プログラミングに使うテキストエディタにはOpenTypeをサポートしていないものも多く、これらが見られる機会はあまりないのが残念ではあります。

書体の名前のBelinskyとは、私の一番のお気に入りかもしれないアニメ映画である、ラルフ・バクシ監督の『American Pop』から来ています。この映画は移民の家族の四世代にわたる主人公たちの目線からアメリカの音楽史を描くもので、この家族の苗字がベリンスキーなのです。この書体と映画とは直接的なつながりはないのですが、ベリンスキーという名前の響きは格好良くて好きだったので、いずれ使いたいと思っていた名前でした。(日本人のくせに海外アニメが一番とは、と思う方もいるかもしれませんが、アメリカ音楽にどハマりしていた中学生時代にこれを見たときの衝撃はあまりにも大きくて、予算の限界から来るであろう脚本や編集、特殊効果の荒さなどの難点は様々あるものの、自分の中で不動の一位の作品なのです。)