iPhone5の画面が嫌い
2012年09月24日
書体デザイナーのブログでタイポグラフィに何も関係ないことを書くのもどうかと思いますが、どうせ誰かに話題を決められてるわけでもないし、少なくともデザインに関係することなので書いておきましょう。僕はiPhone5の画面サイズが大嫌いです。
ご存知の通りAppleは長らくiPhoneの画面を3.5インチ、640960ピクセルのままにしており、つい最近発表されたiPhone5にて縦に256ピクセル追加した6401136の画面を新たに導入しました。(12/11/06訂正:256pxではなく176pxでした。)
9月12日の発表会で同社のフィル・シラーはこんなことを言っています。
“電話のデザインの中心になる物は何でしょう?これです、あなたの手ですよ!電話は手の収まりが良くなくてはならず、我々全てが持つこの魔法のデバイス(親指)で簡単に使えるようでなければいけません。携帯電話はあなたの手に美しくフィットすべきです。メッセージを送るのもメールを送るのもネットサーフィンをするのも楽でなくてはいけません。そして、我々はiPhone5をまさにその通りにデザインしました。”
最後の一文以外は文句なしに賛成です。
彼は続けて、いかに画面の寸法を定めたかを説明しました。まずiPhone5では画面を大きくしたかった(おそらくは競合製品に押されて)、だけどピクセル数の変更に伴う面倒なインターフェイスの作り直しを軽減したかった。また16:9のアスペクト比にもしたかった。そういうわけで画面を縦に伸ばした。さて、これのどこに親指の話が出てくるのでしょう?出てきてないですよね。
シラー氏の言うように、僕も道具の寸法や重さは人体から定まるべきだと思います。なので「最薄」だとか「最軽量」などというキャッチコピー(特にパナソニックは大好きらしい)には一切興味がありません。ソニーのPreminiやメモリースティックミニなど、小さすぎて使えた物ではないような製品は沢山あります(逆に個人的に好きなのはBang & Olufsenのリモコンです。これはユーザーが投げたりといった粗雑な扱いを防ぐように、あえて重めになっています)。おそらくiPhoneに最も共通性の高い問題を抱えているのはINFOBARでしょう。あれはとても美しくデザインされてて、大ヒットした携帯の一つだと思いますが、本体を少し持ち替えたりしなければ親指で全てのボタンに届くことができず、非常に使いづらいデザインです。一度メールの試し打ちをしたことがありますが、あまりにも手の運動量が多く、あっという間に疲れたのを覚えています。
Appleの発表の後、INFOBARの無駄に長いデザインで味わった苦労をiPhone5でまた味わうことになるのではないかと不安になり始めました。「Appleに限ってそんなことするはずないんだけどなぁ…」と。さっそく土曜日にApple Storeに行って確かめてみたら、案の定的中したのです。本体を持ち替えることなく画面の上端からホームボタンまで親指で操作するのは無理でした。僕の親指が小さいからだと思う方もいるかもしれませんが、これでも僕の指は平均より長い方です。それにAppleが米国でやってる、一見普通に使えてそうなCMでもこれは確認できました。
ぱっと見には、親指で画面の上端からホームボタンまで使えてるように見えるかもしれません。しかしそれを同時に比べてみると、やはりホームボタンを押すときに下に持ち替わっていることが分かります。つまりAppleも5より4または4Sの画面サイズの方が使いやすいことを暗に認めていると言っていいでしょう。大したことではないかと思うかもしれませんが、iPhoneだと上端と下端の往復は結構頻繁にやることですし、そのたびに本体を持ち替えなければいけない携帯なんか要りません。購入される前には可能な限りお店に行って使用感を確かめてみてください。
皮肉なことにiPhone5はEarPodsという新規にデザインされたイヤフォンが付属します。これは数百もの人間の耳の3Dスキャンデータを元に作った物だそうですが、なぜAppleはiPhoneの画面を作るときに同じアプローチを取らなかったのでしょうか。それこそがまさに人体中心のデザインのはずではないでしょうか?
今日まで僕はiPhone4を使っていましたが、5に触れるまで4の画面がどれだけピッタリだったかに気づいていませんでした。僕の4はスリープボタンが逝っててホームボタンもそろそろ危なく、そろそろ買い替え時かと思っていました。しかし今やiOS6(の特にマップ)がダメダメ、iPhone5もダメダメとなっては、おそらく4Sを可能な限り早く入手するのが最良の選択になることでしょう。今だったらiOS5が入ったままのものもあるはずです。4Sでも十分ベターですが、いずれあの4インチの画面のiPhoneに乗り換えなければいけない日が来るのかと思うと今から鬱です。しかも、おそらくこのような失敗はiPhone以外にも今後も続くでしょう。