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コンペのタダ働き問題

9 October, 2015

ロゴなんかのデザインコンペを見たときに、なにやら不公平な印象を抱いたことはありませんか。その違和感には名前があるんです。英語圏でのデザイン業界ではspeculative work、略してspec work(スペックワーク)という言葉があります。これは支払いが未確定な仕事、もっと言えばタダ働きの可能性が濃厚な仕事という意味で、特にデザインコンペに対してよく使われる言葉です。 » Continue reading «

単語と言語

9 October, 2015

あんまり時事ネタを書くのは趣味ではありませんし(そもそもブログ自体が習慣になってないし、この記事も2か月近く放置していたものの再利用…)、他の方も散々書かれていることだとは思いますが、五輪ロゴの審査について自分も思うところがあったので書きます。私は英国に住んでいるのでこの問題が日本のマスメディアでどう扱われているかは分かりませんが、ネットの情報を見る限りではロゴに対する認識がその本来の役割とズレているのでは、と感じました。ここで扱うのはロゴの役割なので、純粋にデザイン的な側面から佐野研二郎さんのロゴについて私見を書きはしますが、その出自は本題と関係ないので扱いません。今回はテーマ別の二本立てです(後編はこちら)。 » Continue reading «

Arion PressとM&H Typeに行ってきた

24 April, 2015

3月末にサンフランシスコに旅行に行ってきました。いろいろタイプ関係の人たちに会ってて、結局仕事でやることとあまり変わらない休暇(そういう人たちに会うのが一番楽しいんだから仕方ない)。

サンフランシスコで文字関係で特にやりたかったこととの一つにArion PressM&H Typeを見るというのがありました。M&H Typeは世界最大の活字鋳造所で、Monotypeを主としたいろいろな活字を製造販売している場所でもあります。私も大学生の時にCentaurの14ポイントをここから買ったことがあります。おそらくMonotypeの新しい活字を買おうと思ったら、もはやここ以外では入手できないのではないかと思います。Arion Pressは工芸としての本を作る工房で、テキストの選定からデザイン、組版、製本まで徹底的にこだわり抜き、年間3作ほどしか発行せず、数百部作った後は再版もしません(印刷が終わったら組版を保存せずに活字を全て溶かします)。Arion Pressの本は新品価格も数十万円程度ですが、本の愛好家の間ではとても評価が高く、のちに新車が買えるほど高騰する場合もあるそうです。M&H TypeとArion Pressは基本的に同じ工房で、Arion で使う活字はM&Hの設備を用いて鋳造します。活字を売る窓口がM&Hと呼ばれているだけ、ともいえるでしょう。 » Continue reading «

Glyphs 2.0の新機能

13 October, 2014

また久々の投稿になります。たかだか数ヶ月に一回気が向いたときにブログを書くためだけに一体いくら払ってるのやら…。

さてさて、先月ATypIバルセロナ期間中に待望のGlyphs 2のベータテストが開始されました。その新機能を紹介していきます。

 

カラーフォント作成機能

ColorOm

対応の流れが静かに押し寄せてきているカラーフォントですが、少なくともフォント制作ソフト側の準備は整っています。現段階のGlyphs2では各レイヤーに色をつけて作業ができ、フォント出力際にはそれぞれを別のフォントとして出力するようになっています。将来的にカラーフォントをネイティブにサポートするアプリケーションが出てくれば、そういう形式での出力も可能になると思いますが、現段階では組版アプリ側で色を付けて重ねることを想定した仕様です。またこの機能の追加に併せて、全てのマスターのアウトラインの同時編集が可能になりました。

 

ウェブフォント直接書き出し

これまで欧文では、一般ユーザーがウェブ形式のフォントを書き出すにはFont Squirrelなどのサイトを利用するしかありませんでしたが、Glyphs2ではWOFF、WOFF2、EOTの三種類をそのまま書き出すことができます。

 

TrueTypeヒンティング

これもリクエストの多かった機能です。選んだポイントの内容によって適切なヒンティングをしてくれますし、まだ合成する前のアウトラインにもヒンティングが可能です。デルタには対応していません(だってデルタはさすがにもう要りませんよね?)。

 

CJKガイド

CJK-Guide

フォント情報の「マスター」タブのカスタムパラメータに「CJK Guide」という項目が追加されています。漢字や仮名の字面のガイドです。全角の%で入力しますので、例えば値を95にすれば全角から5%内側に正方形が出現します。またガイドは何個でも追加できますので、一つを95、もう一つ92を足すなんてこともできます。上の図はその通り95と92を追加した状態。

 

和文フォントの和名登録

LocalisedName

これまでGlyphs 1.xから和文フォントに「和名を付けて」出力するのは文字コードを変換する必要があり、とても面倒でした。今回からはそのまま入力できます。フォント情報の「フォント」タブのカスタムパラーメータで「localizedFamilyName」を選び、言語と和名の書体名を入れてください。通常のファミリー名のところを必ず欧文で入力しなければいけないのは変わりません(英語名は絶対必要ですので)。

 

仮名のグリフ名変更

仮名はこれまで「a-hiragana」や「i-katakana」と無駄に長いグリフ名でしたが、Glyphs 2からは「a-hira」、「i-kata」など短くなります。現在Glyphs 1で和文フォントを作られている方にはちょっと不便な話かもしれませんが、変更は一発で済むはずなので大丈夫でしょう。

 

他にも超便利な隠し球の機能があるんですが、まだまだ改善が必要なため紹介は見送ります。まだ不安定ながら便利すぎるので仕事でも既にバリバリ使用中です。

 

最後にベータ参加の条件を説明します。
・MacOS X 10.8以上を使用している(Lionはサポートしません)
・既にGlyphs 1.xのユーザーである。App StoreからGlyphs 1.xを購入された場合、ベータテストにはApp Storeのレシートをメールで見せる必要があります。

正式版がリリースされると、Glyphs 1.xを2014年7月以降に購入された方はGlyphs 2に無償アップグレードできます。それ以外の方はアップグレード価格となる予定ですが、その金額はATypIでアナウンスされてたと思いますが覚えておらず…。

ダウンロードはこちらから:
http://www.glyphsapp.com/beta

アポストロフィのスペーシング

24 July, 2014

ちょっと文法寄りの話。

Elision-spacing

道路標識のスペーシングは酷いしアポストロフィに発音記号のアキュートを使ってるなど本筋と関係ない問題もいろいろありますが、それはさておきます。

フランスのナンシーでこんな道路標識を見つけて、アポストロフィのスペーシングが気になったので撮っておきました。フランス語では名詞が母音で始まり、かつ冠詞(le、duなど)がその前に付く場合は、冠詞の母音をアポストロフィで省略し、単語をくっつける「エリジオン(elision)」という処理をします(例:le eau → l’eau)。またフランス語でHは発音しないことも多々あるので、そのような場合はHの前でもエリジオンを行います(例:d’Haussonville)。この標識では間にスペースが入ってますが、本来は間違いです。判別性を意識して単語を分けることを優先した結果なのかもしれませんが。

このアポストロフィは冠詞の母音を省略しているので、lやdに属します。前述のとおり、その後にスペースを入れるのはおかしいのですが、それでも詰めすぎるのも好まれません。たとえば ’A’ ’H’ ’L’ などアポストロフィと大文字とのスペーシングは初期状態だとバラツキが多いのでカーニングで詰めることが多いのですが、l’Americanの’Aは詰めてほしくないというフランス人のタイポグラファも多いようです。もうちょっと簡単に言えば、フランス語ではアポストロフィの後の空間はすこし緩めが好ましいということです。これは同様のエリジオンがあるイタリア語にも当てはまります。L’ で始まる単語はアポストロフィが次の文字に寄りがちですし(例:L’affaires、L’enfant)、内容によっては次の字が大文字にも小文字にもなり得ます。ネイティヴの組版者であっても見落としやすいチェック項目です。

しかし話はこれだけでは終わりません。後ろのDomino’s Pizzaを見てください。いま私の説明したスペーシングがここにも反映されているように見えますが、これは英単語ですので、スペーシングの考え方を変えなくてはいけません。しかしフランスでのDomino’sは自然とこうなっちゃうんでしょうね。

所有格の-’sは英語でのエリジオンですが、これは昔は-esと書かれていて、そのeが省略されているわけです。つまりアポストロフィはsと近い方が正しいと思います(アポストロフィの前を空ける必要はありませんが)。個人的にはアポストロフィはちょうど中間に見えればいいとおもいますが、少しs寄りになっているのは構いません。’sが空いているのはマズいと思います。

所有格のアポストロフィがどちら側に属するのかという知識は横書きではあまり重要ではありませんが、縦だと必須になってくると思います。英語圏でも縦書きの看板のどこにアポストロフィを付けるのかは見解が分かれるようですが、私は上に述べた理由からsと切り離すべきではないと思います。

縦書きアポストロフィの扱いは英語圏でも様々で、個人的には同意しないものもあります。興味のある方はこちらをご覧ください。

lAffaires&Dominos

こんな感じのスペーシングが見たかったです。

ここからは技術的な話です。すこし戻って、フランスとイタリアのアポストロフィのスペーシングの違いに、書体デザイナーはどう対処できるかを考えたいと思います。一つ目の方法は’Aなどのカーニングを始めから緩くしておく方法ですが、これだと他の言語も影響を受けますので、あまりお勧めしません。またカーニングには「l’Aと並んだ時は’Aのスペーシングを違うものにする」など、2文字以上が絡むカーニングも存在しますので、それを使うといいでしょう*。言語や好みの問題とは別に、L’と’Aがキツめに詰まっている書体だとL’Aは下が足がくっついてしまう場合がありますので気をつけた方がいいです。ご興味のある方はGlyphsでの実装法のリンクを張っておきますが、日本語で説明してほしいという方がおられましたらどうぞコメントください。

* カーニングをよく「ペアカーニング」と呼ばれる方がいますが、カーニングは2文字(ペア)より多い発動条件を指定できますので、ペアカーニングという言葉には何も意味がないと思います。この言葉が生まれた経緯は知らないのですが、ひょっとしたらカーニングとトラッキングを同義としていた時期なり業者なりがあって、「カーニング(全体のスペーシングすなわちトラッキング)」に対するローカルな調整として「ペアカーニング」という言葉が生まれたのかもしれません。この辺の言葉がいつ日本で使われ始めたのか全く知らないがゆえの推測ですので、ここに関しては無茶苦茶なことを言っているかもしれません。ご意見歓迎いたします。

以上の二つの方法もとりあえず問題ないのですが、気になるのはなにもAだけではありません。本当ならどの文字に対しても少し緩めのスペーシングが発生するのが理想です。一体どうすればいいでしょうか?Adobeは面白い方法で実装しています。Garamond Premierにはサイドベアリングが多めに設定されたフランス語、イタリア語専用のアポストロフィのオルタネートがあるのです(InDesignなどで当該言語を指定していると自動で使われる)。ただしアポストロフィは引用符にも使われるので、そのぶんキツめにカーニングしなければいけないグリフの組み合わせはありますが、賢い方法だと思います。

最後に画像でのまとめ。

Different-apostrophe-treatments

画像を作ったあとに思ったんですが、やっぱりArnoのL’Aはフランス語であってもAに寄りすぎな印象はありますが、これは書体デザイナーが面倒を見るべきレベルを超えている気がします。自分が組版者だったらもっと左寄りに調整すると思いますが、書体デザイナーとしては…どうでしょう?将来的にはやるかもしれません。

身近な書体:Comic Sans

20 April, 2014

ComicSans

久しぶりの身近な書体シリーズです。今回はComic Sansを採り上げます。

Comic Sansは1994年に作られてWindows 95(のPlusパック)に搭載されて以来、Windowsユーザーにはおなじみのフォントです。特に欧文圏ではそのカジュアルさがウケているようで、様々な場所で使われている書体です。まぁプロからすれば特に良くはない書体ですね。それどころかタイポグラファーやデザイナーの間では忌み嫌われている存在で、これの駆逐をテーマにしたウェブサイトもあるぐらいです。

(ちなみにこのサイトの運営者はカップルであり、共通の趣味、つまりComic Sans排斥で意気投合して結婚したそうです。Comic Sansの作者Vincent Connare氏は「自分の書体のおかげで夫婦が誕生したんならこんなに嬉しいことはない」と言ってます)

でも、本当にそこまで徹底的に叩かれるほど悪い書体でしょうか。まず、Comic Sansはどういう経緯で生まれたのかを説明します。 » Continue reading «

フォントを変えるだけで4億ドルも節約できるのか?

30 March, 2014

一昨日あたり、「Times New RomanからGaramondに書体を変えるだけで、米国政府は年間4億円ものインクコストを削減できると中学生が発見した」というニュースが世間を賑わしていました(少年はCNNにも採り上げられたり)(日本語記事)。当然これに対するタイポグラファの反応は冷ややかなもので、自分も全く納得できません。最近は核融合路を作る中学生がいたり、なにかと若い学生の革新的なアイデアが取りざたされることが多いようですが、残念ながらこの件に関してはそこまで説得力はありません。これに対して書かれたブログ記事を読んで多いに納得したので、許可を得て翻訳しました。元記事の筆者であるTom Phinneyは元Adobeで、現在はSuitCaseというフォント管理ソフトで知られるExtensisでシニアプロダクトマネージャーを勤めており、ATypIの委員でもあります。

元記事:Tom Phinney, Saving $400M printing cost from font change? Not exactly…
(
Thanks Tom!) » Continue reading «

文字と誕生日のカレンダー2014

17 November, 2013

もうすぐ師走ですね。来年のカレンダーはどれにするか、もうお決まりでしょうか?タイポグラフィをテーマにしたカレンダーは少なからずありますが、今回おススメするのは来年分で初デビューの「レターフォーム&バースデイ」カレンダーです。現在Kickstarterで支援者を募っているところで、あと50時間ほどで終わってしまいます。ぶっちゃけ今回はその宣伝です。ぜひともこのカレンダーのプロジェクトを成功させましょう!

(追記:プロジェクトは無事に目標額に達成しました。ご協力ありがとうございます。)

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ゴシックという名称の由来

19 August, 2013

ひょんなことから内田明さんのブログ記事「Alternate Gothicがゴシックの源といふデマについて」ならびに「Alternate Gothic起源説の起源」を見ていて、そんなデマがあるのかと驚きました。6年も前のお話にいまさら飛びつくのもどうかとは思いますが、まぁ鮮度が重要な話ではありませんし、Alternate Gothicがどういう書体なのかが正しく理解されていないことが原因であると思いましたので記事にしました。基本的にこの記事は先の二つの記事の補足のような形になると思いますので、先にそちらを読まれた方がいいでしょう。

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Metro Novaのスタイリスティック・オルタネート

16 August, 2013

Metro Novaの投稿3本目です。まぁ後半に追記でもすればいいかとは思いましたが…

ただいまMetro Novaが大出血セール中です(通常ファミリー価格1147ドルのところ、現在99ドル)。購入を検討の方は今がチャンス!考えてなかった人もウッカリ買っちゃって試してみてください。MyfontsLinotypefonts.comにて。

リリースされてから気が付いたのですが、公式の見本PDFには大事な説明が抜け落ちていました(私の製作ではありません)。Metro Novaにはさまざまなオルタネート(異体字)が入っていますが、それをどう使うかが説明されていませんでした。つまりはInDesignやApple製アプリケーションで使用可能なスタイリスティック・セット(またはデザインのセット?)の内容の解説です。どのリストに何が入っているかは、以下のPDFをダウンロードしてお確かめください。

Metro Novaのオルタネート見本PDFをダウンロード » Continue reading «

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